8.12御巣鷹山事故から26年目にあたって(声明)


日本航空は御巣鷹山事故の教訓を生かし、公共輸送機関の使命である「安全と公共性」の確保を最優先せよ

―御巣鷹山事故から26年目にあたって(声明)―

 1985年8月12日、日本航空123便が群馬県の御巣鷹山に墜落、520名の尊い命が犠牲となりました。単独機の事故としては航空史上最悪の事故でした。改めて犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆様に心から哀悼の意を表します。

あれから26年の歳月が経ちました。この間、現場の労働者は日本航空経営に対して、123便事故の反省に立ち、現場無視・安全軽視の労務政策を転換し、絶対安全の確立に向けての事業改善を求め続けてきました。

 その日本航空は、昨年1月19日に経営が破綻し、政府主導の下に再建計画が進められ今日に至っています。こうした中で日本航空は、昨年の12月31日、年齢と病気欠勤を理由にパイロット・客室乗務員165名を整理解雇するという暴挙に出ました。

私たちは、日本航空の経営破綻の原因は、これまで日本航空経営が行ってきたドルの先物予約やホテル・リゾート開発など、本業以外の事業投資への失敗、日米貿易不均衡を理由とした米国からの圧力による過大な航空機の導入や空港の乱造、空港整備の財源確保のための高い着陸料の設定など、政府・航空行政にあることを度々指摘してきました。こうした放漫経営や政府・航空行政の責任を免罪し、現在進められているような労働者犠牲の日本航空再建を絶対に許す訳にはいきません。 

 人員削減については、1,500名の削減目標に対して1,733名が希望退職に応じ、削減目標はすでに達成していたこと、業績についても12月末段階で1,586億円の利益を挙げている状況もあるなど、整理解雇の必要性は全くありませんでした。この3月期の決算では641億円の利益目標に対して1,884億円もの営業利益を達成しています。一方、現場では大幅な人員削減と労働条件の改悪によって社員の流失が続き深刻な影響が出ています。人手不足による労働強化だけでなく、社員のモチベーションにも影響を与え、昨年の秋以降、運航の現場では安全トラブルの発生が連続しています。そのため2月から3月には国土交通省航空局の立ち入り調査が実施されました。今まさに、日本航空の再建が安全第一の再建か、利益優先の再建かが鋭く問われている状況にあります。

 稲盛会長は5月16日付の日経ビジネス誌のインタビューで「御巣鷹山事故以降、安全のために全ての経営資源を集中させるという考え方。乗客の安全こそ我々の使命で、利益を出すことは邪道と言う雰囲気があった。これでは本末転倒です。」と答え、社員に対して、御巣鷹山事故がトラウマとなっていると批判し“利益なくして安全なし”という経営理念を強調しています。この稲盛氏の発言は、520名の犠牲者とその家族の“空の安全を願う気持ち”を冒涜するもので航空会社のトップとしてあるまじき発言です。 

またこの発言は、御巣鷹山事故の真の事故原因究明に努力し、「二度と事故を起こしてはならない」との決意で、日夜必死に安全運航を支えてきたベテランのパイロットと客室乗務員を邪魔者扱いして排除する考えと共通しているものです。御巣鷹山事故以前の状況を振り返れば、当時の日本航空経営はジャンボ機の安全神話を吹聴し、一方では分裂政策によって“もの言えぬ職場”を作りだし、整備の現場では「儲ける整備」をスローガンに社員に意識転換を求め、自社機の整備よりも他社機の整備で収益の拡大に力を入れてきた歴史があります。

 経営破綻前の一昨年12月、作家の柳田邦男氏を座長とする日本航空安全アドバイザリーグループは「安全への投資や取り組みは、財務状況に左右されてはならないのであって、相対的に見るなら財務状況が悪化した時こそ、安全への取り組みを強化するくらいの意識を持って『安全の層を』厚くすることに精力を注がなければならないのである」と提言しています。

航空会社の存立基盤は安全であり、その安全を支えているのは現場の労働者です。東京電力福島第一原発の爆発事故による放射能汚染の拡大は、利益優先の経営がもたらした典型的な例と言えます。

また、2011年8月3日には、日本航空の更生手続きを担う管財人・企業再生支援機構が、昨年の人員削減施策をめぐる労使協議において、労働組合に対して違法な不当労働行為を行ったことが東京都労働委員会で認定され、不当労働行為救済命令が交付されました。人員削減のためなら違法行為も厭わないという、まさに利益優先の経営姿勢の表れです。

私たちは、日本航空に対して利益優先の再建を改め、違法・不当な、そして人間の尊厳をも踏みにじる無法な解雇を一日も早く撤回することを求めます。


 御巣鷹山事故から26年目の今日、私たちは新ためて政府と日本航空に対して、過去の連続事故の教訓を生かし、利用者国民の期待に応え、公共輸送機関として「安全と公共性」重視の再建を要求するものです。

2011年8月12日

JAL不当解雇撤回をめざす国民支援共闘会議

JAL不当解雇撤回裁判原告団

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